乳酸菌で多能性細胞の作成に成功

熊本大大学院生命科学研究部の太田訓正(くにまさ)准教授らの研究グループがこのほど、ヒトの体細胞に乳酸菌を取り込ませることで、さまざまな細胞に分化できる多能性細胞を作り出すことに成功したことがわかった。世界初の研究成果で、論文は昨年12月26日付けの米科学誌プロスワンの電子版に掲載された。(=写真はプロスワン電子版に掲載された論文)

太田准教授らは、ヒトの皮膚(ふ)細胞周辺のタンパク質を除去し、細胞に乳酸菌を取り込ませて培養する方法で、多能性細胞の開発に成功。同細胞が多能性を有することを試薬で確認し、これまで5種類(神経、筋肉、脂肪、骨、軟骨)への分化にも成功しているという。

多能性細胞はこれまで、京都大の山中伸弥教授が開発した人工多能性幹細胞(iPS細胞)が知られているが、iPS細胞はヒトの体細胞に4つの遺伝子を加えて作成するのに対し、今回開発された多能性細胞はヒトの体細胞に乳酸菌を取り込ませるというまったく新しい手法で作られた。

iPS細胞は一定条件下で細胞が増殖し続けるため、細胞のがん化の可能性も指摘されていたが、太田准教授らの多能性細胞は細胞が直径0.3ミリ程度まで成長すると増殖が止まるという特徴があり、マウスを使った実験ではこれまで一度もがん化が確認されていないという。

乳酸菌は代謝により乳酸を生成するバクテリアの一種で、一部はヒトの腸など体内にも存在している。乳酸菌による作用は自然界でも起こり得ると考えられ、iPS細胞に比べ、細胞への負荷も軽減できるのではないかと期待される。再生医療への道を開く大きな研究成果で、今後の進展が注目される。

プロスワン電子版に掲載された論文はこちら