古代劇場に『移動式木造舞台』

%e3%83%a1%e3%83%83%e3%82%bb%e3%83%8d%e3%81%ab%e3%81%82%e3%82%8b%e5%8a%87%e5%a0%b4%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%83%88%e7%94%a8熊本大大学院先導機構の吉武隆一純教授は、ヘレニズム期の劇場に移動式の木造舞台が存在した可能性が高いことを6月19日、明らかにした。ドイツ考古学研究所の国際学術雑誌に掲載された。日本人研究者の論文がこの専門誌に掲載されるのは1981年以来2人目。同大地中海建築研究室が50年以上、古代ギリシア・ローマ建築の調査研究を行ってきた成果と言える。

劇場の歴史は、古くは古代ギリシア時代にさかのぼる。中央を舞台として円形の舞台にすり鉢上の観客席で構成された素朴で開放的な形の劇場のもの。しかし、ローマ時代は、舞台が高くなり、閉鎖的な劇場に変化した。こうした劇場建物の発展には、ヘレニズム末期の舞台建物の変化が関係していると見られていた。

2007年に発掘されたギリシア古代都市のメッセネにある劇場で、舞台脇から大きな舞台収納室と3本の石列が見つかった(=写真、矢印は石列)。その際、同研究室は現地調査を行った。このような遺構は、メガロポリスとスパルタに存在することが知られ、場所も近接している。そのため、収納室と石列の機能について研究が進められいたが、見解が分かれていた。

同研究室は、関連する3つの遺構を相互に比較分析し、メガロポリスの劇場では「木製の背景画パネル」が、スパルタとメッセネの劇場では「車輪付き木造舞台」が存在した可能性が高いことを明らかにした。今後、ギリシア時代からローマ時代にかけて、劇場建物の発展過程が明らかになることが期待される。